現在、伊藤健太郎主演で現代版が放送中の「東京ラブストーリー」。
おそらく2020年の日本に、平成版である鈴木保奈美&織田裕二の「東京ラブストーリー」を鮮明に覚えてる人は少ないだろうし、きっと現代版のみを若い俳優陣目当てに見てる人も多い…と思うので補足的に昔と今、何がどう違うのか、簡単にまとめてみようと思います。

①テンションが低い
まず1個目それかよって感じですが、平成版「東京ラブストーリー」(以下“東ラブ”)において、“テンション”はかなり大きなピースなんです。
平成版は、鈴木保奈美の保奈美リカが、いきなりエア電話で会話しだしたり(電話模写…リリリーンって自分で言いながらダイヤル式電話をジェスチャーで表現し、カンチに強制的に会話を仕向ける謎システム、そして裕二カンチはそれにちゃんと乗っかる)、突然のカーンチ!だったり、名シーンである「セックスしよ!」と、超爆裂テンションなんです。
で、その「セックスしよ!」が爆裂テンションのおかげで全然生々しくないし、むしろそんなテンションおかしいリカが、いつも以上にと意識的にテンションをさらに上げて「セックスしよ!」って言うから”せつなさ”が加わるんですよね。
あと、演出もカーンチ!って言った保奈美リカに三段ズーム(小リカ→中リカ→大リカと3回ズームアップする)するトンチキテンション演出。ただこのハイテンション演出も、どんどんせつなさが増幅していく後半に向けてのフリだったりもするんです。

一方、現代版はテンションがかなり低め。なんならリカの声のトーンもかなり低め。これは現代の恋愛に対する熱量、価値観の違いも加味してのことなんでしょう。あんなにテンションが高くいられるのはバブル景気もあったでしょうし(その年はバブル崩壊してるとは言え、”テレビドラマバブル”ではあったはずで、ドラマがイケイケになりつつあって時代…イケイケって…)、恋愛の優先順位が圧倒的に上だったことも大いに反映されてのことでしょう。今回は前作よりかなりテンションは低めにして、だからこそリカの重要な要素でもある “奔放さ”を行動だけにとどめ、より自由な女性を強調するキャラクターにしたんでしょう。演出も平成版と比較して圧倒的に洗練されてるし、オシャレで、”東京”というより”TOKYO”。だからオープニングのタイトルも英語表記なんでしょうね。

②カンチがリカにマジになっちゃってる
どうでも良さそうな1個目だったのに、2個目ですでに本質的なところへツッコんじゃいます。一応これは僕的見解と前置きしますが、裕二カンチは決してリカに本気にならないんです。もちろん、画面上や展開上ではラブラブ描写もあり、リカに傾いてる部分もあるけれど、それは尽くしてくれるリカに対して、自分も誠意を尽くしたいだけであって決して愛情ではないんです。そしてリカはそれが嫌という程わかっている。だからこそ猛烈にテンションが高いリカを”やべー女”じゃなく、”せつない女性”として描けているわけだし、カンチもリカを見ているその先には絶対”さとみ”がいる、だからやっぱり”せつなく”なるんです。
テンションがやたら高いのに、なぜかせつない、その”なぜか”は決して結ばれない運命が見えるからで、テンションとせつなさのギャップが、後世まで語り継がれる名作となった所以なんです。

さて、現代版はというと、もう結構好きになっちゃってる。っていうか、「セックスしよ!」のあとにマジでセックスしちゃってる描写を映してることから、余計にマジ度が高くなるわけです。直接的に表現するからこそ”軽さ”みたいなものも演出できる…という意図なのかもしれないけれど、現代版は、まだそこまで想像させる”含み”は感じられません。その違和感を最後まで描いてどう払しょくするのか、むしろフックにできるか?が現代版「東ラブ」の腕の見せ所といえるでしょう。

③性描写
個人的に一番びっくりしたのが、先の「セックスしよ!」のあとの性描写。平成版「セックスしよ!」は言ったあと、事後で、「結局したんかい!」という全視聴者からのツッコミが入る名シーンになっています。しかし、現代版、「セックスしよ!」は、その直後、結構カンチもガッツいてやっちゃってるんですよね。これぞ現代アップデート版!でFODならでは!とも言えますが、「セックスしよ!」のセリフのあとに、ホントにやっちゃってるシーンを見せつけられる現代版限定視聴者は、この時のリカとカンチの心情をどう慮ってるのか、ちょっと心配になります。
リカは決してカンチと本気で第一に”やりたい”わけじゃなく、さとみの一件をカンチから紛らわす、励ましたいがための「セックスしよ!」になんです。つまり結局やっぱり”せつなさ”がここに加わるわけですね。それをマジでにホントに”やってる”とこ見せちゃったら、せつなさ、かなり激減、する…と思うんですが…。とはいえ現代版。ああいうスタイリッシュに性の描写が、今の日本でもできるようになったかと思うと、アップデートされてない…とは言い切れないか…。

④ストーリーラインは結構そのまま
平成「東ラブ」全体のあらすじをざっくり言うと、リカとカンチの恋愛をさとみと三上くんで邪魔をするってだけの話。それを、全11話、ほぼその4人で時間を埋めるっていう凄みがあるのです。
で、今回の現代版、それはかなり踏襲できてます。違うのは舞台となる会社が「ハートスポーツ」っていうスポーツ用品の代理店じゃないことくらいかな?(「ハートスポーツ」はなんでかしつこく、それから何十年経ったあと織田裕二主演「ラストクリスマス」でも同じ設定で登場したくらい。)
あとはいい意味で全然仕事しないし、恋愛の会話ばっかりだし、第4話のカンチと嫌な感じで別れたあと、不倫疑惑があった和賀部長に電話するリカ…で次週。っていうこの流れなんてそのまんま。
だからこそ前作と見比べながらドラマを深く楽しむ・・・っていうめったにないチャンスになってるんじゃないでしょうか。

⑤あとは”さとみ”次第
あとはこの一文に限ります。
第4話でLINEやインスタグラムを使った現代版だからこそできる”さとみの嫌な女描写”がされました。とはいえ、前作の也実さとみは今回ほど病んではいないし、むしろ健康的で、健康的であるのに病んだ風にカンチを振り回し、三上くんもキープし、自暴自棄になって突然カンチとポッキーゲームをする…という極限にまで達し、全女性視聴者を敵に回すのです。現代版は小道具をアップデートしたことによってより粘着度が増し、病的な印象も増したことで、さとみにややおもしろみや同情が出てしまうのか…というのがやや懸念材料ですが、だからこそ前作とどんな味わいの違いを見せるのか?ここも現代版を注目すべきポイントでしょう。

っというわけで、現代版「東ラブ」はFOD、もしくはAmazonプライムにて配信中です。

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